Step 4

物件選定

「借りてから工事できない」を防ぐ。内見時のチェックポイント。

最終更新: 2025-12-24

「日当たり良好、駅近、家賃も手頃!最高の物件見つけた!」 ……ちょっと待ってください。その物件、グループホームには「使えない」かもしれません。

一般の住宅探しと、グループホームの物件探しは「別競技」と言っていいほどルールが違います。 見た目が良くても、法律の壁に阻まれて指定(許可)が下りないケースが後を絶ちません。

ここでは、数多の失敗事例から導き出された「物件選びの落とし穴」と、それを回避する「実践的な攻略法」を解説します。


1. 「良い物件」のモノサシを変える

一般住宅なら「駅近」「築浅」「おしゃれ」が正義ですが、グループホームで最優先すべきは 「法的に適合するか」 です。 どんなに素敵な内装でも、建築基準法や消防法をクリアできなければ、事業はスタートできません。

当サイトを「一次スクリーニング」に使う

手当たり次第に内見に行くのは効率が悪すぎます。まずは当サイトの物件一覧を活用してください。 ここには、あらかじめ以下の情報が掲載されています。

  • 適合度(参考指標)
  • 建築・消防・スプリンクラー などの設備状況

まずはここで「箸にも棒にもかからない物件」を弾き、候補を絞り込むのが賢いスタートです。 ただし、サイトの情報はあくまで「入口」です。最終的なGOサインは、必ず後述する専門家の判断を仰いでください。 (当サイトは賃貸の紹介サービスとして、初動の見極めを速くするための情報整理に注力しています。)


2. 内見前に確認!「4つの足切りライン」

現地に行く前に、図面や資料だけで「この物件は無理だ」と判断できるポイントがあります。無駄足を防ぐために必ずチェックしましょう。

① 築年数(新耐震基準)

「1981年(昭和56年)6月」が運命の分かれ道です。

  • 新耐震基準: 1981年6月1日以降に建築確認を受けた建物。原則OKです。
  • 旧耐震基準: それ以前の建物。原則NGですが、以下のいずれかで「新耐震と同等」と認められれば指定が下りる可能性があります。
    1. 耐震基準適合証明書がある: 取得費用は3〜5万円程度ですが、そもそも耐震性がないと発行されません。
    2. 耐震補強工事を行う: 数百万円〜の費用がかかりますが、実施すれば認められます。
    • 結論: 「証明書がすでにある」場合を除き、基本的には避けるのが無難です。

② 用途地域(都市計画法)

「そこに住居を建てていい場所か?」というルールです。

  • NG: 工業専用地域(工場専用エリア)。ここは住めません。

  • 要注意: 市街化調整区域(原則、建物を建てられないエリア)。許可を取るハードルが非常に高いです。

  • 調べ方: 自治体の「都市計画図 / 用途地域図(GIS)」で、住所を入れて確認します。

    • 不動産会社の口頭説明だけで確定せず、地図で裏取りするのが安全です。

③ 検査済証(建築基準法)

建物完成時に「法律通り建てました」と証明された書類です。

  • なぜ必要?: 延床面積が 200㎡を超える 場合、用途変更の手続きで原則必須になります。

  • 現状: 古い戸建てなどでは紛失していることが多いです。「200㎡以下」なら、なくても代替策で進められるケースが多いので、広さとの兼ね合いで判断します。

  • 紛失している場合の次善策(まず役所): 自治体の建築指導課などで、建築確認の台帳から

    • 確認台帳の記載事項証明
    • 建築計画概要書(写し) など、確認関係の情報を取れるケースがあります(呼び名・取れる範囲は自治体で異なります)。
    • 結論として「用途変更が必要か/代替で足りるか」は、延床面積・現況・過去の用途で変わるため、建築士に早めに当てるのが最短です。

④ 消防設備(消防法)

ここがコストの震源地です。

  • スプリンクラー: 設置義務がある物件だと、初期費用が数百万円単位で跳ね上がります。
  • 自動火災報知設備: ほぼ必須ですが、「無線式の簡易型」でいいのか、「配線工事が必要な本格型」なのかで費用が桁違いです。

3. 失敗しない「契約までの最短フロー」

一番ある失敗パターンは、「要件がふわっとしたまま契約・着工してしまう」 ことです。 手戻りを防ぐため、以下の順序を死守してください。

  1. 資料収集: 図面、現況写真、面積、検査済証の有無を集める。
  2. 建築・消防の事前相談:
    • 「この建物をグループホームにする場合、用途変更は必要か?」
    • 「想定する入居者像(障害支援区分など)で、必要な消防設備は何か?」 を役所・消防署で確認し、要件を確定させます。
  3. 見積もり取得: 確定した要件をもとに、工事費用の概算を出します。
  4. 条件交渉: 工事の承諾や原状回復の範囲を大家さんと握ります。
  5. 契約: ここまで詰めて初めてハンコを押します。

4. 大家さんへの交渉術

当サイトの強み: 当サイトに掲載している物件は、掲載前に大家さんへ交渉を行い、グループホーム利用の許可を取得した上で掲載しています。 (ただし「改修の範囲」「原状回復」「回線工事」などの細かい条件は物件ごとに異なるため、最終条件は必ず契約書(特約)で確定してください。)

「障害者グループホーム」と聞くと、漠然とした不安から断られる大家さんも少なくありません。 こちらのメリットを明確に伝え、不安を解消しましょう。

  • 「スタッフが常駐します」: 管理人がいないアパートより、人の目があって安心です。
  • 「法人契約です」: 個人契約より家賃滞納リスクが低いです。
  • 「長く借ります」: 設備投資をして入居するため、短期での退去は考えにくく、安定収入になります。
  • 「保険に入ります」: 火災保険や賠償責任保険への加入を約束し、万が一の備えを伝えます。

5. プロが見ている「落とし穴」チェックリスト

専門家は、図面や内見でここを見ています。

🏗 建築の落とし穴

  • 「200㎡」の壁: 延床面積が200㎡を超えると、用途変更の手続きが重くなります(費用・期間増)。
  • 既存不適格: 「建てた時はOKだったけど今の法律ではNG」な物件。改修範囲が広がるリスクがあります。

🚒 消防の落とし穴

  • スプリンクラー: 「設置義務あり」だと予算オーバーの可能性大。
  • 区画(壁・扉): 「ここに壁が必要」「この扉は防火戸に」といった指摘で、内装工事費が膨らむことがあります。

🚿 設備の落とし穴(運営目線)

  • 水回り: トイレや浴室の数は足りているか? 動線はスムーズか?
  • キッチン: 複数人の食事を作るのに十分な広さと換気能力があるか?
  • バリアフリー: ちょっとした段差が転倒事故やクレームの元になります。

🚰 インフラの落とし穴(上下水・浄化槽)

  • 水道(口径・メーター): 人数が増えると「水圧が弱い」「同時使用で足りない」ことがあります。改修が必要だと工事・負担金が発生するケースがあります。
  • 下水 / 浄化槽: 下水未整備エリアは浄化槽の容量不足が致命傷になりがちです。入居人数に対して容量が足りるか、点検・清掃の費用も見込みます。
  • 貯水槽: 貯水槽がある物件は、清掃・点検などの管理義務が乗る場合があります(扱いは自治体や設備条件で変わります)。

🌐 通信の落とし穴(Wi-Fi / 回線工事)

  • 回線が引けるか: 賃貸は「工事の承諾」が必要です。内見時点で、引込経路・配管の余裕・既設回線の有無を確認します。
  • 電波状況: 生活支援は夜間対応や緊急連絡が前提です。携帯電波が弱い立地は、運用上のストレスになります。

🚗 送迎・駐車場と近隣の落とし穴

  • 駐車台数: スタッフ・社用車・来客で必要台数が変わります。近隣の月極を含めて「確保できるか」を先に確定。
  • 送迎の停車: 停車場所がないと、路上停車や騒音で近隣トラブルの火種になります。
  • 近隣説明の段取り: 反対をゼロにするのは難しいので、説明資料・連絡窓口・ルール(喫煙、ゴミ、騒音、送迎)を先に決めておくと後がラクです。

🗑 ゴミの落とし穴

  • 家庭系 / 事業系: 自治体によって扱いが分かれます。契約形態(賃貸)と運営実態で判断されることもあるため、ルールを事前確認。
  • 集積所のルール: 分別・曜日・置き方を守れないと、最初にクレームになりやすいです。

📝 契約の落とし穴

  • 原状回復: 「スプリンクラーや手すりを付けたけど、退去時はどこまで戻す?」を契約書(特約)で明確に。
  • 解約条項: 設備投資を回収する前に退去を迫られないよう、契約期間や解約条件を確認。
  • 用途・改修の承諾: 「福祉用途で使う」「設備を増設する(手すり、回線、カメラ等)」を、口約束ではなく書面に落とす。

まとめ:100点満点の物件はない

「駅近で、広くて、安くて、改修不要」なんて物件は存在しません。 大切なのは、事業計画(収支)と照らし合わせ、「どこまでならコスト(改修費・家賃)を許容できるか」 という基準を持つことです。

そして、最終判断は必ず 建築士・行政書士・消防設備士 などのプロを巻き込んでください。 契約後に「実は使えませんでした」という悲劇だけは、絶対に避けましょう。