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資金計画

初期費用はいくら?融資や補助金はどう使う?お金の不安を解消。

最終更新: 2025-12-24

本記事は法律や融資制度の解説ではなく、「見積もりを崩さずに開設するための資金計画」に焦点を当てた実務ガイドです。補助金や融資制度は頻繁に改定されるため、必ず国や自治体、公庫の公式情報で最新の要件を確認してください。


資金計画において最も重要なのは「必要額を正確に当てること」ではありません。 「開設までに資金ショートさせない」「工事・設備の手戻りで予算を膨らませない」「資金調達の順序を間違えない」 という3点を確実に押さえることです。

特に補助金はタイミングが命であり、着工後の申請は認められないケースが大半です。ここでは、失敗しないための資金計画の組み立て方を解説します。


まず押さえる前提:給付費の入金サイト(タイムラグ)

障害福祉サービスは、 サービス提供月→請求→国保連からの支払 というサイクルで動くため、実際の入金までにはタイムラグが発生します。事業開始直後は手元のキャッシュが薄くなりがちです。

  • 入金までの期間: 体感として「約2か月」を見込んでおくのが安全です。
  • 支払日の確認: 地域によって事務日程が異なるため、指定権者や国保連のスケジュール表で確定させてください。

この「入金の遅れ」があるため、開業時の資金計画では初期投資だけでなく、 数か月分の運転資金 をどう確保するかが死活問題となります。


初期投資:変動要因と抜け漏れ防止

「総額いくら必要か」という問いへの答えは物件や地域によって千差万別です。実務上は、 何が金額を大きく変動させるか という要因を押さえておく方が役に立ちます。

区分 代表例 変動が大きい理由 先にやるべきこと
物件契約 敷金・礼金、保証金、仲介、火災保険 地域・築年数・用途の扱い 候補物件の時点で“用途/区分”を相談
改修工事 間取り変更、内装、バリアフリー 既存不適格・工事範囲・区画 「現況/計画」の図面を揃える
消防設備 消火器、誘導灯、自火報、非常警報等 用途・規模・区画で要求が変わる 消防の事前相談で“必要設備”を確定
家具家電・備品 ベッド、家電、事務机、PC 入居者側準備の範囲で差が出る “用意する/しない”の方針を決める
採用・立上げ 求人、研修、ユニフォーム 立上げ時期と採用難易度 採用開始月を逆算して固定費化
専門家・申請 行政書士、社労士、登記、規程整備 依頼範囲で差 「どこまで外注か」を決める
予備費 想定外の是正・追加工事 ほぼ必ず出る “最初から枠取り”しておく

最大のポイントは、 消防・建築の要件が固まらないまま工事を発注しない ことです。ここがブレると、追加工事で予算が大きく狂います。


運転資金:最低3か月分からの逆算

安全側に倒して計算するなら、以下の目安を持っておくと良いでしょう。

必要運転資金 ≒ (月次固定費) × 3 + 立上げ追加費

月次固定費には、少なくとも以下の項目を含めます。

  • 人件費(サビ管、世話人、生活支援員など。採用の前倒し分も考慮)
  • 家賃、水道光熱費、通信費
  • 車両費、保険、消耗品
  • 記録・請求ソフト等のシステム利用料

「利用者が定員まで埋まれば黒字になる」という計画でも、 そこに至るまでの数か月を耐えきれなければ 事業は継続できません。


資金調達の選択肢と組み合わせ

資金調達はどれか一つに絞るものではなく、 自己資金+融資+(可能なら補助金) を組み合わせるのが一般的です。

  • 日本政策金融公庫: 創業融資の定番です。
  • 福祉医療機構(WAM): 福祉貸付(施設整備資金など)。長期・固定金利が特徴です。
  • 制度融資(都道府県/市区町村): 信用保証協会の保証が付くことが多く、自治体が利子補給を行う場合もあります。
  • 民間金融機関: 地元の信金や地銀など。運営実績ができると交渉しやすくなります。
  • リース/割賦: 車両やIT機器を分けることで、手元の現金を温存できます。

補助金の考え方:タイミングと“つなぎ資金”

補助金は強力な支援策ですが、実務上はいくつかの落とし穴があります。

  • 事前申請が必須: 多くの補助金は、契約や着工の前に申請・内示・交付決定が必要です。
  • 精算払い: 原則として後払い(事業完了後の入金)となるため、工事代金などの支払いに充てるための「つなぎ資金」が別途必要になります。
  • 要件の地域差: 自治体によって対象経費や上限額が大きく異なります。

よくある補助金の例

補助金の名称や対象経費は自治体ごとに違いますが、相談の現場でよく出てくるのは次のような類型です。

  • 施設整備(新築・改築・改修)系: 建物や大規模改修に対する整備費補助(国/都道府県/市区町村で組み合わせることがあります)。
  • 開設準備(立上げ)系: 開設に向けた準備経費(備品、研修、立上げに伴う一部経費など)を支援する補助。
  • 自治体の上乗せ(区市町村)系: 都道府県等の補助に加えて、区市町村が独自に上乗せする整備費補助や基金型の助成。

繰り返しになりますが、補助金は 公募時期・予算枠・要件が毎年のように変わる ため、必ず一次情報(要綱・募集要項・担当課の案内)で最新条件を確認してください。

資金計画においては「補助金は取れたらラッキー」程度に考えるのではなく、 活用するなら工程に組み込む、組み込めないなら最初から計算に入れない と割り切ることで、資金ショートのリスクを回避できます。


資金計画のパターン例

金額は物件や地域で変わるため、ここでは資金構成の“構造”を示します。

パターンA:賃貸戸建+小規模改修(スモールスタート)

  • 主な支出: 物件契約費、軽微な改修、最低限の消防設備
  • 計画のポイント: 運転資金を厚めに確保すること。立上げ直後の空室期間を乗り切る体力を重視します。
  • 資金構成例: 自己資金+公庫(運転/設備)+一部リース

パターンB:賃貸+中〜大規模改修(用途変更など)

  • 主な支出: 内装工事、区画変更、消防設備、原状回復義務への備え
  • 計画のポイント: 消防・建築の要件確定を最優先すること。見積もりが確定してから資金調達に動かないと、融資額が不足します。
  • 資金構成例: 自己資金+WAM/公庫+制度融資

パターンC:物件購入・建物整備(長期事業)

  • 主な支出: 物件取得費、大規模改修、長期借入の返済
  • 計画のポイント: 長期返済に耐えうる収支計画と、補助金活用の工程管理。
  • 資金構成例: 自己資金+WAM(施設整備)+自治体補助金

金融機関への提出資料(最低限の準備)

融資審査で見られるのは、事業の「夢」ではなく「破綻しない現実的な設計」です。

  • 事業計画: 定員、対象とする障害区分、支援方針など。
  • 収支計画: 入居率の推移(厳しめに見積もる)、給付費の入金タイミング、家賃設定など。
  • 人員計画: 採用スケジュール、サビ管の確保見込み。
  • 物件資料: 図面、現況写真、改修範囲、消防・建築への事前相談記録。
  • 自己資金の裏付け: 通帳の写しなど、提示できる形で準備します。

参考資料(一次情報)