Step 6

指定申請(自治体)

一番の難関。膨大な書類と実地検査をクリアするためのロードマップ。

最終更新: 2025-12-25

物件が決まり、法人も作り、内装工事も終わった。 最後に待ち受けるのが、行政への「指定申請」という書類の山です。 書類の不備や準備不足で、オープンが遅れることも珍しくありません。 ここでは、指定申請を通すための「共通の型」と「落とし穴」を整理します。

※指定申請は自治体ごとの運用差が大きく、様式や必要書類も改定されます。一次情報(自治体サイトの「手引き」「様式集」「チェックリスト」「募集要項/要綱」)を起点に、担当課へ最新の運用を確認してください。


0. このページの前提(自治体別は別ページ)

このページで扱うのは、自治体差が出にくい「共通の考え方」と「実務のコツ」です。 一方で、以下は自治体別ページで扱うテーマです。

  • 締め切り(日付)や提出方法(窓口/郵送/電子)
  • 独自様式、独自チェックリスト、独自の追加提出物
  • 事前協議の回数や予約ルール、担当課の分掌

1. 指定申請は「3つの束」で考える

申請が通るかどうかは、この3つが噛み合っているかで決まります。

1) 建物・設備(図面と現況)

  • 図面(寸法入り)と、完成後の現況が一致している
  • 各室の用途が明確で、基準に照らして説明できる
  • 防火・避難・防炎など、他法令(建築/消防)側の前提が崩れていない

2) 人員・体制(置ける人が、実在する)

  • 管理者、サービス管理責任者、世話人/生活支援員等が「資格・要件を満たす」
  • 採用済み、または採用見込みが現実的(実務経験証明の確保を含む)
  • 勤務体制(シフト)として破綻していない

3) 運営・契約・記録(紙の中身が運用できる)

  • 運営規程、重要事項説明書、利用契約書の内容が矛盾しない
  • 苦情対応、事故対応、個人情報、虐待防止、身体拘束適正化などの体制が「書面化」されている
  • 記録(サービス提供、個別支援計画、会議、研修等)を残す運用が最初から設計されている

2. 申請のスケジュール感(逆算が命)

多くの自治体では、指定(事業開始日)は「毎月1日」が基本です。 ただし、提出締め切りと補正期間(差し戻し修正)は自治体で大きく変わります。

  • 目安: 指定日の2〜3ヶ月前から事前協議 → 指定日の1〜2ヶ月前に本申請 → 補正 → 実地検査

重要なのは「工事完了」と「申請が受理される」の間にズレが出ることです。 現場は完成しているのに、書類の補正が終わらず指定が取れない、が一番つらいパターンです。


3. 申請の流れ(4ステップ)

ステップ1:事前協議(図面・体制の相談)

理想は「契約前」または「契約直後」に一度、論点を潰しておくことです。 この段階で見られるのは、図面だけではありません。

  • 図面(用途、寸法、動線)の説明
  • 想定する運営形態(支援の入り方、夜間体制など)の説明
  • 体制(管理者/サビ管/世話人等)の目途

ステップ2:本申請(書類提出)

量の多い書類をまとめて提出します。 一度で受理されることはめったにないので、修正(補正)を前提にスケジュールを組むのが安全です。

ステップ3:実地検査(現地確認)

担当者が建物に来て、図面と運用の整合をチェックします。 見られやすいポイントは、このあたりです。

  • 図面と現況の一致(数センチのズレでも説明を求められる)
  • 生活できる状態か(備品の不足、未設置がないか)
  • 防炎ラベル等の確認(カーテンなど)
  • 掲示物・備付書類(重要事項の掲示、緊急連絡体制など)

ステップ4:指定書の交付

問題なければ指定書が交付され、指定日から事業開始となります。


4. 揃えるべき書類(代表例)

自治体で名称・様式は変わりますが、構造としては次のカテゴリに分かれます。

法人・事業所の基本情報

  • 指定申請書、付表
  • 法人登記事項、定款、役員名簿等

人員・体制

  • 管理者、サービス管理責任者等の経歴書・資格証等
  • 実務経験証明書(発行に時間がかかるので、ここがボトルネックになりやすい)
  • 勤務体制(シフト表、配置の考え方)

建物・設備

  • 平面図(寸法入り、用途明記)
  • 設備関係の資料(自治体の指示に従う)

運営・契約・記録(落ちやすい)

  • 運営規程(事業の目的、方針、主たる対象者、提供内容、利用料、通常の実施地域等)
  • 重要事項説明書(利用前に交付・説明・同意を得る前提の文書)
  • 利用契約書
  • 個人情報の使用同意書

体制整備(監査でも見られる)

  • 苦情対応の体制と手順
  • 事故発生時の対応(連絡、記録、再発防止)
  • 虐待防止の体制(責任者、委員会、研修等)
  • 身体拘束等の適正化の体制
  • 非常災害・感染症・業務継続等の対応(自治体の要件に合わせて整備)

5. 実地検査で詰まらないための準備

実地検査は「現場」と「書面」の整合チェックです。 当日までに、次を最低限そろえておくと詰まりにくいです。

  • 図面一式(最新の完成形と一致したもの)
  • 生活できる備品(ベッド/冷蔵庫等、運営形態に応じて)
  • 防炎物品(カーテン等)の確認
  • 掲示物(重要事項、虐待/苦情窓口等は自治体の指示に従う)
  • 記録のひな形(サービス提供記録、会議記録、研修記録など)

6. 補正(差し戻し修正)を最短にするコツ

補正は、内容のミスより「整合の崩れ」で発生しがちです。

  • 用語統一(事業所名、住所表記、代表者名、電話番号、サービス名称)
  • 日付の整合(作成日、施行日、開始予定日が前後していないか)
  • 運営規程・重要事項説明書・契約書の整合(料金、提供内容、苦情窓口など)
  • 委任の整理(代表者以外が契約や説明を行う場合の権限の扱い)
  • 副本(控え)の保存(提出物は必ず同一セットを残す)

実務経験証明書は、採用が決まったら早めに依頼して進捗を追ってください。 どうしても発行が難しい場合は、「何が代替として認められるか」を先に自治体へ相談してください。


7. よくある不備と対策(開設前に潰す)

  • 実務経験証明書が集まらない → 採用と同時に依頼し、督促と代替の相談を早期に
  • 図面と現況が違う → 工事中に変更が出たら、図面も必ず更新(ギリギリ設計は避ける)
  • 重要事項説明書と運営規程が矛盾 → 料金/提供内容/体制/苦情窓口は必ず突合
  • 契約・同意が運用されない設計 → 契約書/同意書/説明の手順を開設前に固定
  • 記録の運用がない → ひな形を作り、誰がいつ書くかまで決めてから開始
  • 備品が間に合わない → 実地検査日から逆算し、調達の納期を前倒し

まとめ:行政書士に頼るのも手

指定申請は自分で行うことも可能ですが、手間と時間がかかります。 また、自治体運用の差が大きい領域です。

  • 時間をお金で買う: 専門の行政書士に依頼すると、書類作成や役所とのやり取りを代行できます(費用は地域・範囲で変動)。
  • 自分でやるなら: 手引きを読み込み、補正を前提にスケジュールを厚く取る

どちらを選ぶにせよ、成功の鍵は「逆算」と「整合性」です。