制度の行方と、賃貸で始める道
業界は「量から質」の転換点にあります。この変化は、福祉の志を持つ人にとって追い風です。
総量規制 ― グループホームにもブレーキがかかる
2025年12月8日、厚生労働省は社会保障審議会・障害者部会において、グループホームを「総量規制」の対象に追加する方針を提案しました(出典:ニッセイ基礎研究所「グループホームに総量規制?」2025年9月30日 / 厚生労働省 社会保障審議会障害者部会(第153回)議事録)。
総量規制とは、自治体が障害福祉計画で定めたサービスの必要量に達している場合、新たな事業所の指定を制限できる仕組みです。これまで生活介護や就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービスなどが対象でしたが、グループホームは含まれていませんでした。
つまり、従来はグループホームの開設希望があれば、指定要件を満たす限り自治体は原則として指定するしかなかったのです。
厚労省は審議会で、自治体から「事業者の運営体制や制度理解が十分でないと感じている場合でも、指定基準をクリアした申請書類が揃っていれば事業者の指定をせざるを得ない」状況があると説明しました。自治体アンケートでも、総量規制の対象に加えるべきサービスとしてグループホームを挙げる声が最も多かったと報告されています(出典:ニッセイ基礎研究所 同上)。
福祉新聞の報道によると、この方針は委員から大筋で合意を得ました(出典:福祉新聞 2025年12月13日)。
「量」から「質」へ ― 何が変わるのか
同じ2025年12月、財政制度等審議会は2026年度予算の建議(意見書)のなかで、グループホームの指定基準の見直しを提言しています。具体的には、介護保険制度にならって管理者・世話人・生活支援員の資格要件を定めるべきだとしています(出典:NPOあいち障害者センター 2025年12月5日)。
現行制度では、管理者の要件は「社会福祉主事任用資格、または社会福祉事業に2年以上従事」と比較的緩やかです。世話人や生活支援員には資格要件がありません。この「入口の低さ」が、未経験者の大量参入を可能にしている面があります。
また、2025年度からは地域連携推進会議の設置が義務化されました。グループホームが地域の中で孤立せず、自治体・地域住民・関係機関と連携して運営する体制が制度的に求められるようになっています(出典:ソーシャルインクルー)。
審議会の委員からは「悪貨が良貨を駆逐する状態を防ぐ仕組みが不可欠」という声が上がっています(出典:ニッセイ基礎研究所 同上)。
制度は明らかに「量の拡大」から「質の確保」へと舵を切っています。
志ある参入者にとっての追い風
総量規制と聞くと、「もう新規参入できなくなるのでは」と心配する方もいるかもしれません。
しかし、厚労省は一律にグループホームの開設を抑制するものではないと強調しています。
特に以下のような場合は、総量規制の例外として扱う方針が示されています。
- 強度行動障害の支援に対応するグループホーム
- 医療的ケアが必要な利用者を受け入れるグループホーム
- その他、地域で受け皿が不足しているニーズに応えるもの
(出典:福祉新聞 2025年12月13日)
つまり、「地域に本当に必要な、質の高いサービスを提供できる事業者」は、今後も参入が認められます。むしろ、質の低い事業者が排除されることで、真面目にやっている事業者・これから始めたい事業者にとっては競争環境が改善されることになります。
これは、福祉の経験と志を持つ方にとって、明確な追い風です。
賃貸で始めるという現実的な選択肢
グループホーム開設の初期費用は、物件の取得方法で大きく変わります。
新築で建てる場合は数千万円規模の投資が必要です。コンサルやフランチャイズのパッケージを利用すれば手続きは楽になりますが、費用の負担は大きく、月々のロイヤリティが発生することもあります。
一方、賃貸物件を活用する場合は、大幅に初期費用を抑えることができます。
| 新築パッケージ型 | 賃貸活用型 | |
|---|---|---|
| 初期費用 | 3,000万円〜 | 300万円〜 |
| 物件 | 土地取得+新築 | 既存物件を賃借 |
| 開設までの期間 | 1年〜 | 3〜6か月 |
| 資金調達 | 融資が前提 | 自己資金+小規模融資 |
| 柔軟性 | 固定資産を抱える | 撤退・移転がしやすい |
賃貸活用の場合、主な初期費用は敷金・改修費・備品・保証金などです。自治体によっては開設に対する補助金制度もあります。
ただし、賃貸での開設には物件選定の目利きが重要です。建築基準法や消防法の基準を満たすか、居室の面積や設備要件をクリアできるか、近隣住民の理解が得られそうかなど、契約前に確認すべきポイントがあります。
必要なのは「建物」ではなく「志と情報」
この一連のコラムで見てきたように、障害者グループホームの業界には構造的な問題があります。
- 福祉経験のない営利法人がコンサル頼みで大量参入し、不正や虐待が増えている
- 本当に福祉をやりたい人は、物件が見つからず参入できない
- オーナーや近隣住民の偏見が、賃貸物件の流通を阻んでいる
しかし同時に、制度は「質」を重視する方向に転換しつつあります。
いま必要なのは、大きな資金力ではありません。
障害のある方の暮らしを支えたいという志。現場で培った経験と知識。そして、賃貸から始められるという正しい情報。
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まず、一歩を踏み出す
グループホームの開設は、決して簡単ではありません。法令の理解、自治体との調整、人材の確保、そして何より利用者の生活を支え続ける覚悟が求められます。
しかし、あなたが現場で感じてきた「もっとこうできるはず」という思いは、この業界が本当に必要としているものです。
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出典一覧
- ニッセイ基礎研究所「グループホームに総量規制?」宮垣淳一(2025年9月30日)
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=83343?site=nli - 厚生労働省 社会保障審議会障害者部会(第153回)議事録
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70397.html - 福祉新聞「障害者GH、総量規制の対象に追加 計画で供給過剰是正も」(2025年12月13日)
- NPOあいち障害者センター「財政制度等審議会、2026年度予算編成に向け建議」(2025年12月5日)
- 福祉新聞「障害福祉の費用急伸 持続可能な制度検討」(2025年11月29日)
- ソーシャルインクルー「障がい者グループホームで起こるトラブルとは?」
本コラムシリーズの情報は2026年4月時点のものです。制度改正の動向により内容が変わる可能性があります。最新の情報は厚生労働省の公式発表や、各自治体の窓口でご確認ください。
